東京・池袋で高齢者が運転する乗用車が暴走し、2人が死亡、9人が重軽傷を負った事故の発生から19日で6年が経った。妻の松永真菜さん(当時31)と長女の莉子ちゃん(同3)を失った松永拓也さん(38)ら遺族はこの日、現場近くの慰霊碑を訪れ、発生時刻に手を合わせた。
- 元受刑者からの手紙、憎しみから前を向く 池袋暴走事故遺族の6年
「どれだけ悲しくても頭に浮かぶのは、真菜と莉子の笑顔と、『お父さん』と呼んでくれる2人の声。2人の命を無駄にしないという思いで生きていく」。松永さんは報道陣にそう語った。手を合わせながら、「心配しないでくれ」と心の中で伝えたという。
松永さんは事故後、遺族としての経験を講演で話すなど、事故を減らすための活動を続けてきた。だが、高齢ドライバーによる事故は今も絶えない。松永さんはこの日、「免許返納は手段でしかない。高齢者に寄り添ったうえで、地方では交通手段のインフラ整備の議論をしてほしい。加害者にも被害者にもならない社会にならなくてはいけない」と訴えた。
真菜さんの父・上原義教さん(67)は昨年5月、松永さんとともに、事故を起こした元受刑者(93歳で死亡)と面会した。「悲しさは今でも変わらないけど、今年は少し違った気持ちで参列した」。そのうえで、「真菜も莉子も本当は会って抱きしめたいけど、かなわない。2人は私にとって宝物。二度とこのような事故は起きてはいけない」と涙ながらに訴えた。
事故現場はこの日も多くの車や人が行き交った。
埼玉県川口市から訪れた本田紗菜実さん(36)と母の由美さん(64)は、莉子ちゃんのためにグミを供え、手を合わせた。紗菜実さんは事故発生当時、現場近くの職場で働いていたといい、「尋常ではないサイレン音だった。(真菜さんは)年齢も近く、子どもと一緒に巻き込まれた壮絶な事故は忘れられない」。事故の後、2人は3~4カ月に1回のペースで慰霊碑に通ってきた。由美さんは「6年経っても、身につまされる思いは変わらない」と話した。